脳の誤作動記憶を調節する心身医療 心と脳と身体との関係性 -心身条件反射療法協会のサイトー

  脳に学習された誤作動記憶を調整する心身相関統合療法

 心身条件反射療法
(ニューロパターンセラピー)

Psychosomatic Conditioned Reflex Therapy

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投球恐怖症、イップスの改善例とその注意点

報告者 : 保井 志之(ファミリーカイロプラクティックセンター)                                    2016.9.1

【経緯】14歳の中学生男子、野球部に所属しており、ピッチャー希望ではあるが、ファーストも守っているらしい。一週間前からほとんどのスローイングができなくなったとのことで、最初はお父様からの電話で問い合わせがあり、スタッフに当院でのイップスの改善事例などを尋ねたらしい。小学2年生の頃から野球を初めているとのことで、詳しく聞いてみると、以前からイップスの徴候があったようだ。お父さんもイップスの経験があり、そのために野球を断念したらしい。また、お兄さんも高校二年生のときにイップスで野球を断念したとのことだった。お父様は、自分や長男の経験から次男はもう野球は止めなければならないだろうと心配しつつも、何とかイップスを治す方法はないものかとインターネットで検索し、当院にたどり着いたらしい。
【1回目の施術】まずは、身体的なエネルギーブロックの検査で、頭部全体の反応点に陽性反応が示された。送球イメージの検査でも陽性反応。興味深かったのはすべての送球で陽性反応が示されたことだった。問診でもすべての送球で投げることができないとのことだったが、一応、生体反応検査法で確認した。すべての送球に関する検査で陽性反応を示すイップス患者は、比較的珍しい方で、もしも、イップスに程度があるとすれば、重症の部類に入るだろう。
PCRTの検査では、大脳辺縁系→信念に反応が示され、信念チャートの検査で、いくつかのキーワードで反応が示され、PCRTのプロトコルに従って施術を行った。

【2回目の施術】(前回施術から3日後)

1回目の施術後には、お父さんとキャッチボールをしてみたらしく、お父さんによるとある程度治っていたのでそのときは安心したらしい。でも、ボールが浮く感じがあるとのこと。大脳辺縁系→信念という検査結果から、信念チャートで示されたいくつかのキーワードで施術を行った。また、イップスの患者に陥りやすい、スローイングのフォームはこうあるべきといった、いわゆる「技術論」に意識を向け過ぎた誤作動記憶が示されたので、「技術論」に意識を向け過ぎる弊害を分かりやすく説明し、意味記憶と合わせて切り替えた。

【3回目の施術】(前回施術から4日後)

前回の施術から数日で試合があり、その試合にピッチャーとして先発で登板。しかし、一回で交代させられたらしい。「えっ先発したの・・・」という感じだったが、恐らく、ある程度イップスの症状も改善され、監督さんも先発で起用できると判断したのだろう。思うように投げることができずに、監督に交代させられ、後でひどく叱られたという。2週間前にほとんど投げられない状態から2回の治療で、いきなり先発投手を務めるのは早すぎたかな~と思ったが、その経験も誤作動記憶を引き出すうえでは必要だったかもしれない。その試合を振り返りながらピッチングを想像してもらうと誤作動記憶の反応が示されたので、PCRTのプロトコルに従って施術を行った。このとき印象的だったのは、自分の理想のピッチングのイメージができないことだった。自分のベストな投球をイメージしてみるように促すと多くの投手は想像できる。今まで理想の投球をイメージする訓練はしたことがなかったのだろう。そこで、「プロの選手でも先輩でもいいから、理想のピッチャーを想像してみて・・・」と質問すると、2つ年上の先輩のピッチャーが自分の理想としてでてきた。モデルとなるピッチャーを自分に置き換えて、あたかもその理想のモデルのように自分が投球している想像をするように促した。そして、生体反応検査法を行うと、不一致の反応が示されないので、そのイメージを使ってエピソード記憶の施術を施した。さらには自分の理想となる先輩のように投げている自分自身のイメージトレーニングもアドバイスした。

【4回目の施術】(前回施術から2日後)

初診時から反応が示されていた頭部全体の反応点の検査では、すべて陰性反応が示されていた。キャッチボールやピッチングでも陰性反応が示され、かなり誤作動記憶が改善されていた。他に違和感のある場面を本人に尋ねてみると、大分改善されているが、ノックでゴロがきてホーム(キャッチャー)に投げる際に違和感があるという。検査をしてみると「恐れ」というキーワードが示された。思い当たる「恐れ」を尋ねてみると、送球の際、ノッカーや後ろの人に当てるのではないか、さらには、もしも、暴投したり、人に当てたりすると、周りからどのように思われるかが恐れになっていた。PCRTのプロトコルに従って「恐れ」に関係する誤作動記憶を消去した。治療を終えて、付き添いのお父さんに聞いてみると、最初に比べると随分よくなっているとのこと。最初に電話で応対してくれたスタッフの言葉を信じてよかったと喜んでおられた。

【考察】4回目の施術から2週間ほど来院がないので、恐らく改善されているのだろう。もしかすると、まだ、どこかに誤作動記憶が隠れているかもしれないが、改善した経験も踏まえて、問題があれば来院してくれるだろう。お父様によれば、監督さんがとても厳しい方で、その影響もあるのではないかと心配されていたが、生体反応検査法では、監督さん関係の誤作動記憶は示されなかった。イップスの症状を発症してしまうと、多くの選手が「技術論」に救いを求める傾向にある。イップスで治療に来られる選手には毎回のように説明する内容だが、イップスは「技術論」で治るものではない。治らないどころが、技術に目を向け過ぎると治りが悪くなる。イップスは「意識」と「無意識」の不調和によるもので、特に「意識」という「理性」による判断が「無意識」の「感性」、「本能」、「身体」をぎこちなくする。「意識」の部分が「無意識」に向かって、フォームや技術をああしろ、こうしろと命令すればするほど、「無意識」がいうことをきかなくなり悪循環に陥る。イップスを克服するためには、まずは、「無意識」の心の状態を知ることが第一で、そこに「判断」を入れずに、ありのままを受け入れるこが重要である。そして、「どのように投げる」よりも「何のために投げる」ということを念頭に整理して投げることが大切である。身体はその目的に応じて、必要なフォームで投げてくれるはずだ。特に周りの指導者は技術的な指導に注目しがちになる。それも選手にうまくなってほしいという純粋な気持ちからなのだが、技術論に走り過ぎて、成長の芽を摘む危険をはらむので注意が必要だ。技術論が大切な場合もあるかもしれない。でも、「どのように○○しなさい」というよりも、「なんのために○○するのか」という質問を相手に投げかけた方が、数倍上達が早まるだろう。それはなぜだろうか?言うまでもないが、本人が主体的にその行動の目的を考えることが大切だからであるまた、人それぞれに体型や性格も違うので、ベストの技術というのはそれぞれに様々である。結果的に本人自身が苦労して紡ぎ出した技術がベストであって、ベストな技術が最初からあるものではないだろう。
イップスを克服するために、「意識」的に技術(フォーム)を「外」から部分的に変えようする傾向にあるが、多くの場合、それはうまく改善されないどころか、不自然になり、本来の能力が引き出されなくなり、足かせにもなる。イップスを本質的に治すためには、「無意識」的な全体像にアプローチすることが大切である。つまり、「内」から全体的に変えていかなければならない。例えば、ピッチャーであれば、「どのように投げるか」よりも「どんな球を投げたいか」という質問の方が、「意識」から「無意識」へ、「部分」から「全体」へ意識が向きやすくなる。多くの投手は、「伸びるような球を投げたい」という答えが返ってくる。すると、脳(無意識)では、伸びる球を投げるために自然にフォームを創るので、イップスという誤作動が入る余地がなくなる。
「理屈でうまくなる」というよりも「自然にうまくなる」という経験を多くのスポーツ選手が体験しているだろう。「自然にうまくなる」選手の多くは、目的意識が明確にあるようだ。目的が明確になることで、身体は無意識に自然に働いてくれる。目的が不明瞭なのに、身体を部分的に意識でコントロールしようとしても、無意識の脳は全体的に不調和を示すだろう。いくら脳の記憶装置が優れていても、入ってくるデータが不明瞭では、脳の計算処理が混乱して「正しい答え」がでてこなくなる。すると全身の筋肉に伝えられる指令が混線してミスも多くなる。要するに身体の筋肉の一部は「意識」的にコントロールすることができるが、全体の筋肉を「意識」的にコントロールすることはできない。全体をコントロールしているのは「無意識」的な脳であって、指、肘、肩、腰のように部分を同時に「意識」でコントロールすることはできない。
イップスを改善するためには、「外」から「内」へ、「意識」から「無意識」へ、そして、「部分」から「全体」へという考え方が大切になる。また、イップスを治すためには単に肉体へのアプローチや技術的なアプローチ、あるいは精神論的なアプローチだけではなく、心身相関という肉体面と心理面との関係性でアプローチすることが大切で、その背後にはコーチングのコンセプトや技法が使われている。

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