顔面神経(表情筋)と三叉神経下顎枝(咀嚼筋)の混線型誤作動 報告者:保井 志之 D.C.

顔面神経(表情筋)と三叉神経下顎枝(咀嚼筋)の混線型誤作動

顔面神経(表情筋)と三叉神経下顎枝(咀嚼筋)の混線型誤作動
AMおよびPCRT併用による改善症例

報告者:保井志之 D.C.

施術院名:ファミリーカイロプラクティックセンター
開業歴:32年 /  PCRT歴:26年
初診年月日:2024年11月12日
報告期日:2026年3月
患者:62歳 女性 事務職
治療期間:2024年11月12日 〜 2024年11月19日
通院回数:3回 (1回の治療時間:約10分)
治療経過:良好
結果: 完治(顔面・顎症状)
主訴:右顔面の垂れ下がり感・顎の硬さ・洗顔時の違和感
発症時期:顎は2ヶ月前、右半分の表情筋の下垂は数ヶ月前
紹介経路:当院通院中の患者からの紹介

発症からの経緯

当院に通院されている患者さんからある同僚の方の顔の半分が垂れ下がっているとのことで、そのような症状も治せるのかとの相談を受けました。治せるかどうかは実際に検査をしてみないとわからないと返答したところ、数日後にその患者さんが来院されました。

紹介していただいた同僚が指摘されたように、確かに右半分の表情筋が視診で下がっているのが確認されました。また、顎が硬くなっているとの症状も訴えられました。顔面が下がっているとのことで、それは機能異常なのか元から存在している構造的な非対称性の顔なのかを確認するために、機能的な検査を進めました。すると、顎の開閉動作の誤作動反応、右表情筋の誤作動反応などが示されました。

1回目の施術では、アクティベータメソッド(AM)で脊椎全般と右顎関節機能障害の調整を行いました。2回目の来院日には、以前は洗顔をする際に違和感があったが、それがなくなったとのこと。また、両方の顎でちゃんと噛んでいる感覚がしてすごく改善したことを実感されておられました。また、治療を受けたその翌日に紹介してくれた同僚から顔の表情が全然違うとも言われて大変喜んでいただきました。

2回目の施術ではAMに加えて、PCRTを併用して治療を行いました。3回目の施術では顔面と顎の症状は確かに改善しているのを自覚されていました。顔面と顎の反応は示されなかったので、以前から患っている膝や指などの症状の治療を行いました。初診時のNRSは8レベルでしたが、3回目の来院日には1レベルまで改善し、その後も膝の症状で通院されましたが、顔面と顎の症状はぶり返すことなく完治しました。

背景

顔面の一側下垂や開口障害を呈する症例の多くは、一般的に顔面神経麻痺または三叉神経障害と診断されることが多い。しかし、器質的損傷が明確でない場合には、神経伝達や筋制御における誤作動が背景に存在する可能性がある。

本症例では、表情筋を支配する顔面神経と、咀嚼筋を支配する三叉神経下顎枝の協調異常が認められたことから、神経生理学的混線(signal miswiring)による機能性麻痺の一例として、Activator Method(以下、AM)および心身条件反射療法(Psychosomatic Conditioned Reflex Therapy:PCRT)を併用し、短期間で良好な改善を得た。

初診時所見

視診・触診

  • 右側表情筋の下垂が明瞭で、右口角の下がりおよび眼輪筋のトーン低下を認めた。
  • 右顎関節周囲の筋緊張増大、開口時の右偏位および制限を確認。

機能検査(生体反応検査)

  • 右表情筋群に明確な誤作動反応を認めた。
  • 顎の開閉動作においても誤作動反応を確認。
  • 明確な感覚障害は認められず、器質的麻痺ではなく機能性混線による神経制御異常と判断。
以上の結果から、 顔面神経(第VII脳神経)および三叉神経下顎枝(第V3)の複合的誤作動による機能性麻痺と推測された。

治療回数ごとのスケール推移

評価項目 第1回
11月12日
第2回
11月16日
第3回
11月19日
NRS(症状の程度) 8 4 1
CGI-S(初回重症度) 5
CGI-I(改善度) 2 1

スケール推移グラフ

NRS(症状の程度)
CGI-I(改善度)
CGI-S(初回重症度)

施術経過

第1回施術(2024年11月12日) NRS:8 / CGI-S:5

実施法:Activator Methodを用いて、脊椎全般および右顎関節の神経・関節機能を調整。

  • 脊椎全般のAM調整
  • 右顎関節機能障害の調整

結果:施術後、顔面筋トーンの軽度改善を確認。

第2回施術(2024年11月16日:初回より4日後) NRS:4 / CGI-I:2

自覚的変化(患者様の声):

  • 洗顔時の違和感がなくなった」
  • 両方の顎で噛めるようになった」
  • 同僚から表情が全く違うと言われた」

実施法:AMに加えてPCRT(認知調整法)を併用。

  • 誤作動記憶検査において、「表現抑制」「緊張維持」に関連する無意識信号を検出。
  • 背景には仕事関係における恐怖・緊張に起因する潜在的情動反応が確認された。
  • 認知調整により、情動反応の安定化と神経信号の再統合を図った。
第3回施術(2024年11月19日:2回目から3日後) NRS:1 / CGI-I:1

所見:顔面および顎関節の誤作動反応は完全に消失。

NRS推移:初診時 8 → 第2回 4 → 第3回 1 著明に改善。
以後は既往の膝関節および手指症状の治療を継続したが、 顔面・顎症状の再発は認められなかった(完治)。

考察

本症例は、顔面神経と三叉神経下顎枝の協調的誤作動(functional miswiring)によって発現した機能性麻痺と考えられる。PCRTの観点からは、次のような神経生理学的および心理的メカニズムが推測される。

  1. 無意識的緊張反射の持続
    情動性ストレスや表情抑制パターン(例:「感情を表に出せない」「口を閉ざす防衛反応」)が潜在的な条件反射として固定化。その結果、顔面筋群と咀嚼筋群の神経信号が同時に活性または抑制され、協調異常を引き起こした可能性がある。
  2. 末梢および中枢レベルでの信号混線
    両神経は橋(pons)領域で近接し、辺縁系(情動中枢)からの入力を共有している。ストレス性神経反射により、顔面神経核および三叉神経運動核の統御が乱れたと考えられる。
  3. AMおよびPCRTによる再同期化(resynchronization)
    AMにより、関節・筋・神経経路の固有受容フィードバックが再調整され、末梢神経伝達の円滑化が促進された。PCRTの認知調整により、上位中枢(無意識領域)での指令パターンが再統合され、機能的整合性が回復した。

本症例は、構造的損傷を伴わない顔面機能障害において、心理的・情動的背景が神経生理的誤作動として表出しうることを示している。

結語

本症例は、顔面神経(表情筋)および三叉神経下顎枝(咀嚼筋)の混在型機能性誤作動に対し、AMおよびPCRTを併用することで短期間に著明な改善を示した。本結果は、顔面麻痺様症状における機能的神経混線の存在と、心身条件反射的要因の寄与を示唆する、臨床的意義の高い一例である。

キーワード

顔面神経麻痺 三叉神経下顎枝 神経混線 誤作動記憶 PCRT(心身条件反射療法) Activator Method 機能性麻痺 情動性防衛反応

保井志之 D.C. ファミリーカイロプラクティックセンター
PCRTインストラクター(PCRT歴26年)/2026年3月掲載

 
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