過敏性腸症候群(IBS)
特に朝出やすい腹痛
14歳 女性(中学生)| 15回通院 | 著明改善・メンテナンス継続中
報告者:
鶴見 茉由
| 接骨院くら | PCRT歴 4年
報告者・施術院情報
報告者氏名
鶴見 茉由
臨床歴(開業歴)
7年目
PCRT歴
4年
施術院名
接骨院くら
初診年月日
2025年10月20日
報告期日
2026年5月10日
🏷 過敏性腸症候群(IBS)
🏷 予期不安
🏷 自己抑圧・マイルール
🏷 PCRT認知調整法
🏷 思春期・学校不登校
🏷 HSP
症例要約
✓ 著明改善(メンテナンス継続中)
治療期間
2025年10月20日〜2026年4月3日
通院回数
15回
1回の治療時間
30分以内
経過の良し悪し
良し
毎日、朝に腹痛で困っており、特に「学校」を意識すると症状が強く出現していた。施術を重ねていくうちに痛くない日が多くなり改善。時々腹痛が出ることはあるが、調子がいい日が続いており、現在はメンテナンスで通院している。
| 指標 |
初回 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
| 症状の程度(NRS) |
10 |
9 |
6 |
3 |
3 |
8 |
8 |
6 |
5 |
5 |
2 |
2 |
3 |
1 |
1 |
| 症状に対する予期不安 |
10 |
9 |
8 |
5 |
5 |
8 |
8 |
6 |
5 |
5 |
2 |
2 |
2 |
1 |
1 |
| CGI-I(改善の程度) |
− |
3 |
2 |
2 |
2 |
5 |
5 |
3 |
3 |
3 |
1 |
1 |
2 |
1 |
1 |
| CGI-S(初診時重症度) |
7(初回のみ) |
年齢・性別
14歳・女性
職業
中学生
診断
過敏性腸症候群(IBS)
発症時期
中学1年時に悪化
特徴
静か・HSP(自己申告)
中学2年生の女の子が人間関係のゴタゴタをきっかけに腹痛が強くなり、学校に行けなくなった症例です。胃腸科・内科では「過敏性腸症候群だから薬を飲んで様子を見ましょう」となっていました。
中学1年生の時に学校での人間関係でのゴタゴタがあり、それをきっかけに腹痛が悪化。中学2年生の夏休み明けから学校に行けなくなった。平日が症状が強く、休日は楽になる。特に学校を意識すると症状が強くなることを自覚している。患者さんの特徴として、静か・落ち着いている・自分の意思がある。HSPと自分では思っている。
患者の訴え
- 朝起きると腹痛、今も痛い
- 下痢している
- 平日は症状が強い、休日は楽
| 症状の程度 |
10/10 |
| 予期不安 |
10/10 |
| CGI-S(初回症状の程度) |
7/7 |
目安検査・EB検査
下行結腸EB
調整法
AMベーシック(ハード)
PCRT認知調整法(ソフト)
| 身体系&情報系EB |
反応言語 |
内容 |
調整後 |
| 下行結腸EB |
義務 |
友人関係(個人):機嫌を損ねないようにしている。きっかけ→悪気ないことで機嫌が悪くなったことがあった |
陰性化 |
患者の訴え
- ほんの少しだけ良くなったかな
- 腹痛はまだある
- 文化祭でピアノを弾いてくれと頼まれている
- 学校に行けるかな
| 症状の程度 |
9/10 |
| 予期不安 |
9/10 |
| CGI-I(初回比較) |
3/7 |
AMベーシック(ハード)
PCRT認知調整法(ソフト)
| 身体系&情報系EB |
反応言語 |
内容 |
調整後 |
| 下行結腸EB |
復讐心 |
学校・友達関係:自分の言動を振り返る癖。相手を楽しませないといけないルール。きっかけ→小学生の時の記憶 |
陰性化 |
患者の訴え
- 痛くない日も出てきた
- 今日は大丈夫
- 月・金が痛かった
| 症状の程度 |
6/10 |
| 予期不安 |
8/10 |
| CGI-I(初回比較) |
2/7 |
AMベーシック(ハード)
PCRT認知調整法(ソフト)
| 身体系&情報系EB |
反応言語 |
内容 |
調整後 |
| 下行結腸EB+大腸経EB |
利己心+繋がり愛情 |
娘として(両親):手伝わないといけない。今の状態を維持しないといけない。手伝うから信頼を得られているという思考 |
— |
患者の訴え
- だいぶ落ち着いてきた! 10→3
- 腹痛の頻度も少なくなってきた
- 学校も11時くらい目安に行っている
| 症状の程度 |
3/10 |
| 予期不安 |
5/10 |
| CGI-I(初回比較) |
2/7 |
AMベーシック(ハード)
PCRT認知調整法(ソフト)
| 身体系&情報系EB |
反応言語 |
内容 |
調整後 |
| 夜寝ている時イメージ(情報系EB)+下行結腸EB |
恐怖 |
学校関係・人間関係:みんなについていけるかな。同じ熱量で話さなきゃ。そうしないと離れてしまう |
陰性化 |
|
虚栄心 |
マーチングメンバー:頼りになる・優しい。寄り添ってあげられる人。気を遣ってくれているから返さないといけない |
陰性化 |
患者の訴え
- 前よりいい感じだった
- 一昨日の夜に親と喧嘩してお腹が痛くなった
- 朝6時くらいに起きてお腹痛いなと思って15分安静にして治った
| 症状の程度 |
3/10 |
| 予期不安 |
5/10 |
| CGI-I(初回比較) |
2/7 |
AMベーシック(ハード)
PCRT認知調整法(ソフト)
| 身体系&情報系EB |
反応言語 |
内容 |
調整後 |
| 寝ている時イメージ(情報系EB)+小腸EB |
忠誠心 |
娘として:学校行くべき。無理しなくてもいいと言いながら本音は行ってほしいんだなって思う。行きたいレベル10→4。それを伝えた時に周りが不安定になることが不安で言えない |
陰性化 |
患者の訴え
- 痛くなるけど、落ち着きが早くなった
- 学校での生活指導があり、尋問のような時間で苦しかった。過呼吸になってキツかった
- その後に腹痛が強くなって辛い時が増えた(少し悪化)
| 症状の程度 |
8/10 |
| 予期不安 |
8/10 |
| CGI-I(初回比較) |
5/7 |
AMベーシック(ハード)
PCRT認知調整法(ソフト)
| 身体系&情報系EB |
反応言語 |
内容 |
調整後 |
| S状結腸EB |
犠牲心 |
家族関係(娘として):弟の友達家族とバーベキュー。音がうるさくて嫌だったけど言えなかった |
陰性化 |
患者の訴え
- インフルエンザで体調を崩していた
- お腹は同じように痛みが出ている
- 昨日、担任の先生に自分の思いを伝えられた。その後すごくスッキリした自分に気がついた
| 症状の程度 |
8/10 |
| 予期不安 |
8/10 |
| CGI-I(初回比較) |
5/7 |
AMベーシック(ハード)
PCRT認知調整法(ソフト)
| 身体系&情報系EB |
反応言語 |
内容 |
調整後 |
| S状結腸EB+第5チャクラEB |
猜疑心 |
友人関係:私と話していて本当に楽しいのかな?楽しくいないといけない |
陰性化 |
患者の訴え
- 腹痛は少し落ち着いた
- 夜・お風呂の時に思考が止まらなくなり、その次の日に痛くなりやすい
- 頻度・腹痛の辛さとも週1〜2回くらい
| 症状の程度 |
6/10 |
| 予期不安 |
6/10 |
| CGI-I(初回比較) |
3/7 |
AMベーシック(ハード)
PCRT認知調整法(ソフト)
| 身体系&情報系EB |
反応言語 |
内容 |
調整後 |
| お風呂に入っている時イメージ(情報系EB) |
慈悲心 |
自分自身に対して:HSPだから周りと違うから。思考が止まらなくなるのはHSPのせい。自分が迷惑をかけてしまっているという思考になる |
陰性化 |
| 症状の程度 |
5/10 |
| 予期不安 |
5/10 |
| CGI-I(初回比較) |
3/7 |
AMベーシック(ハード)
PCRT認知調整法(ソフト)
| 身体系&情報系EB |
反応言語 |
内容 |
調整後 |
| 下行結腸EB |
執着心 |
マーチングの友人関係:テンションを合わせること |
陰性化 |
患者の訴え
- 変わらずまずまずの調子
- 2日前に朝起きたら痛かった
- 冬休み明けのテストで学校に行けるか心配
| 症状の程度 |
5/10 |
| 予期不安 |
5/10 |
| CGI-I(初回比較) |
3/7 |
AMベーシック(ハード)
PCRT認知調整法(ソフト)
| 身体系&情報系EB |
反応言語 |
内容 |
調整後 |
| 横行結腸EB+第5チャクラEB |
恐怖 |
学校関係:詰められた先生。またみんなに迷惑かけてしまう |
陰性化 |
|
恐怖 |
学校関係:勉強が不安。高校に行けない。自分の中では通信制がいい。親は説得したけど祖父母ががっかりさせてしまう |
陰性化 |
患者の訴え
- 期間空いたが調整がずっと良かった!
- どんど焼きで人前で演奏したがいい感じだった(演奏後少し痛くなったがすぐ引いた)
- 1月のオフ会に参加して楽しかった!また行きたいと思う
| 症状の程度 |
2/10 |
| 予期不安 |
2/10 |
| CGI-I(初回比較) |
1/7 |
AMベーシック(ハード)
PCRT認知調整法(ソフト)
| 身体系&情報系EB |
反応言語 |
内容 |
調整後 |
| 人混みイメージEB |
警戒心 |
過去(小5〜6年):仲良かった人が離れていった。理由はわからない。どうすればいいかわからなかった。混乱する自分がいた |
陰性化 |
|
自立心 |
自分:ピアノの調律師になりたい |
陰性化 |
患者の訴え
- だいぶいい感じ
- 木曜日の夜に少し痛くなった
- 父の受験に関しての話をしてすごくモヤモヤした
| 症状の程度 |
2/10 |
| 予期不安 |
2/10 |
| CGI-I(初回比較) |
1/7 |
AMベーシック(ハード)
PCRT認知調整法(ソフト)
| 身体系&情報系EB |
反応言語 |
内容 |
調整後 |
| 父と話している時イメージ+大腸経EB |
復讐心 |
家族関係(父):自分で考えて頑張ろうとしているのに、真正面から否定された感じで納得いかなかった |
陰性化 |
患者の訴え
- いい感じに3週間過ごせた
- マーチングの全国大会があった時に人混み・新幹線・緊張が重なり腹痛が出た
- 遠方に行った疲れもあって数日体調が悪かった。それ以外はOK!
| 症状の程度 |
3/10 |
| 予期不安 |
2/10 |
| CGI-I(初回比較) |
2/7 |
AMベーシック(ハード)
PCRT認知調整法(ソフト)
| 身体系&情報系EB |
反応言語 |
内容 |
調整後 |
| 全国大会イメージ(情報系EB)+下行結腸EB |
利己心 |
マーチングメンバー・親関係・進路:自分が分からなくなる。自分の思いを守りたい |
陰性化 |
患者の訴え
- お腹が痛くならなかった!!!
- 親としっかり話ができた。話をしたけど全然大丈夫だった!
| 症状の程度 |
1/10 |
| 予期不安 |
1/10 |
| CGI-I(初回比較) |
1/7(著明改善) |
AMベーシック(ハード)
PCRT認知調整法(ソフト)
| 身体系&情報系EB |
反応言語 |
内容 |
調整後 |
| 予期不安イメージ(情報系EB)+下行結腸EB |
逃避 |
マーチングメンバー・自分自身:選択をしなければいけないのにそこを考えることから逃げている。お父さんの思いと自分の思いの違いが引っかかる |
陰性化 |
患者の訴え
- ずっと調子が良かった!
- 1週間前に少し痛くなった。すぐ引いた
| 症状の程度 |
1/10 |
| 予期不安 |
1/10 |
| CGI-I(初回比較) |
1/7(著明改善) |
AMベーシック(ハード)
PCRT認知調整法(ソフト)
| 身体系&情報系EB |
反応言語 |
内容 |
調整後 |
| 痛くなった時イメージ(情報系EB)+下行結腸EB+胃経EB |
利己心 |
2年生の時の担任:先生からの信頼を守りたい。期待に応えないと信頼を失ってしまう |
陰性化 |
病院で「過敏性腸症候群」と診断を受け、薬で様子を見るしかなかった症状が改善した症例です。患者さんの人との関わりや学校でのマイルールが腹痛に関係していました。「相手を楽しませないといけない」「テンションを合わせないといけない」「学校に行かなければいけない」「みんなと同じでないといけない」などの様々なルールがありました。
特に大元になっていたのは「周りの期待に応えないと、信頼を失ってしまう」という思い込みが強く関係し、自分の本音には固く鍵をかけ、周りの期待に応えることを優先しているところがありました。施術を重ねていくうちに、本人が自分の思いを大切にして生活できるようになったことが改善に向かったと思います。
何度も「周りの期待に応えないといけない」という思考で頭が引き戻され、腹痛が繰り返したところがありましたが、自分自身でその思考にハマっていることに気づけるようになっていきました。学校やお家で進路についての話し合いがある時には、自分の思いを伝えることを目標にし、その話し合いでの対処法も考えて実践したことも自信に繋がったと思います。
症状は腹痛ですが、それに隠された患者さんの人生の課題があり、それに共に向き合うことで症状改善はもちろん、人生が豊かになると改めて感じた症例でした。中学生ですが施術する機会を「自分の心を見つめるいい機会」と認識しており、認知調整法の意図をしっかり理解していました。患者さん自身の治したい思いが症状改善の道に向かっていったと思います。
01
この症例の核心的な特徴
鶴見先生のこの過敏性腸症候群の症例報告は、PCRTにおける「状況依存型の身体反応と自己抑圧のテーマ」が非常に丁寧に記録された、教育的価値の高い症例です。IBSという診断を受けた患者の腹痛が、単なる「消化器の問題」ではなく、人間関係における自己表現の抑制と「周りの期待への適応」という情動的なテーマと深く結びついていたことが、施術を通じて明らかになりました。
まず、この症例において最も重要な特徴は以下の3点です。
- 平日・学校を意識すると腹痛が強く出現(状況依存性)
- 休日は楽になる(安全な環境では誤作動なし)
- 「薬で様子を見る」以外の選択肢がなかった(医療的限界)
これはPCRT的には非常に典型的な「状況依存型の身体誤作動」のパターンです。消化器そのものには器質的な問題がないにもかかわらず、「学校」という特定の情報環境が"引き金"となって、脳が誤作動信号を腸管に出力し続けている状態と考えられます。
学校と休日の違いは何か——それは「評価される」「人間関係を維持しなければならない」「期待に応えなければ信頼を失う」という心理的情報の有無に他なりません。
02
症例全体を貫くテーマ
症例全体を通して一貫して見えてくるのは、「条件付きの信頼獲得欲求」を背景とした情動パターンです。
- 「相手を楽しませないといけない」(第2回:復讐心)
- 「手伝いをしているから信頼を得られている」(第3回:利己心)
- 「テンションを合わせないと離れてしまう」(第4・9回:恐怖・執着心)
- 「期待に応えないと信頼を失ってしまう」(第15回:利己心)
この患者さんは、静かで落ち着いた自分の意思を持つHSPの少女です。しかし、その繊細さと観察力の背後に「何かをし続けることで信頼を確保しようとする」という無意識的な構造が埋め込まれていたと考えられます。中学1年生での人間関係のゴタゴタという出来事が、この構造を揺るがす"引き金"となり、それ以降の学校場面において、脳が"危険シグナル"を腸管に発動させ続けていた——それがIBSの実態だったのではないでしょうか。
03
反応言語の変遷が語るもの
各回で検出された反応言語の変遷を俯瞰すると、非常に興味深いパターンが見えてきます。全体を通して繰り返し出てくるのは「信頼・期待・義務」というキーワードと、それに紐付いた「恐怖・忠誠・逃避」の情動クラスターです。
第2回
復讐心
相手を楽しませないといけないマイルール(小学生の記憶起源)
第3回
利己心
繋がり愛情
長女として手伝いをしていないと信頼を失う
第4〜5回
恐怖
虚栄心
忠誠心
同じ熱量で話さなきゃ、気を遣ってくれているから返さないと、本音が言えない
第6〜7回
犠牲心
猜疑心
言えなかった、楽しくいないといけない ← 一時的悪化
第8〜10回
慈悲心
執着心
恐怖
HSPで迷惑をかけている、テンションを合わせないと、高校進路の葛藤
第11〜12回
自立心
警戒心
復讐心
ピアノ調律師の夢、父との衝突
← 自立へのシフト
第14〜15回
逃避
利己心
選択から逃げている → 体への合致確認で終結
← 著明改善
この「期待への適応」というテーマが全体を貫いており、施術を重ねるごとに少しずつ「自分の本音を信頼する」という方向への変容が進んでいったことが、この変遷から明確に読み取れます。
04
第6〜7回の一時的悪化が示すPCRTの本質
この症例で特に注目すべきは、第6〜7回での症状スケールの一時的な再悪化(3→8)です。学校での生活指導という予期せぬ強いストレスイベントが起き、症状が悪化しました。しかしこれは、PCRTの視点からは「正常な経過」です。
PCRTによる治療経過において、新たなストレスイベントによる一時的な悪化は珍しくありません。重要なのはその後の回復力——ストレスへの耐性と、症状を長引かせない力が、施術を重ねるごとに増していくことです。
— 保井志之 / PCRT創始者
事実、第6回での悪化後も、認知調整を継続することで第8〜9回で再び6→5と改善軌道に戻り、その後は第11回以降で一気に2まで下がっています。施術による底力の蓄積が、回復を可能にしたのです。
05
予期不安の変化が示すIBS回復の本質
この症例でもう一つ重要な数値の変化は、予期不安の変化パターンです。症状スケールとほぼ連動して変化している点が特徴的で、身体症状と予期不安が相互に強化し合うIBSの「自己成就的サイクル」が、この数値に如実に表れています。
①
状況依存性の強化
「学校=お腹が痛くなる」という条件付けが繰り返され、予期信号が自動的に発動される
②
自己成就的ループ
予期信号自体が腸管の緊張・過活動を誘発し、予期した症状が現実になる
③
認知変容による解除
「本音を大切にしていい」という認知の変容が、条件付けのループそのものを解除する
第11回での「ずっと良かった」という体験の蓄積が、予期不安を2まで急落させた転換点となっています。認知調整が下地を作り、実際の生活での「大丈夫だった」体験がそれを完結させた——この症例はそのプロセスを15回分の記録として丁寧に示してくれています。
06
進路選択・自己開示が示す情報環境への波及
この症例の特筆すべき点として、第10〜14回にかけての「進路選択(通信制高校)」を巡る葛藤とその解決があります。腹痛という症状を超えて、患者自身の人生の選択——「自分はどう生きたいのか」という問いに向き合うプロセスが、施術の中で並行して進んでいました。
第14回で「お腹が痛くならなかった」という初めての体験が報告されたのは、偶然ではありません。「親と話して大丈夫だった」という自己開示の成功体験が、腹痛という症状を支えていた情動的な緊張を、根本から解放したのだと考えられます。
「自分の本音を伝えること」——この一歩が、腹痛という身体症状を解消させた最大の転換点でした。症状は身体の問題ではなく、その人の人生の課題を映し出す鏡だったのです。
— 第14回目 特記事項より
07
フィードバック(深化のための観点)
1.
発症の直接的契機「人間関係のゴタゴタ」への情報系EB評価
本症例では、発症の直接的な契機となった「中学1年生での人間関係のゴタゴタ」という出来事そのものに対する情報系EBの反応が明示的には記録されていません。「その時の場面のイメージ」を情報系EBとして直接評価した場合、さらに深い誤作動記憶の核心に触れられた可能性があります。考察でこの点に触れるとより理論的な深みが加わります。
2.
「長女としての役割」というテーマをより深く展開できると良い
第3回で出てきた「長女として手伝いをしているから信頼を得られている」という思いは、第15回の「期待に応えないと信頼を失う」に直結する、この症例の情動的根幹です。このテーマがどのように形成され、どのような体験に紐付いているかをさらに掘り下げると、考察の理論的整合性がより強固になります。
3.
第6〜7回の悪化を「試練としての学習機会」として位置付けると良い
第6回の生活指導による悪化は、患者にとっては辛い体験でしたが、PCRTの視点からは「現実の場でまだ言えない自分がいる」という課題の顕在化です。この体験を認知調整に繋げた第6〜7回の施術は、治療の後退ではなく、より深い層へのアプローチへの転換点だったとして考察に加えると、読者への教育的価値が高まります。
4.
対処法の提案(第13回)の位置付け
第13回で行った「自分の思いを伝えるための対処法を一緒に考える」という介入は、PCRT認知調整法の枠を超えた、より実践的な行動変容支援です。この介入が第14回の自己開示の成功につながったと見るならば、PCRTにおける認知調整と行動変容支援の組み合わせの有効性として考察に位置付けると、報告の完成度がさらに上がります。
Essence of this case
周りの期待に応え続けることで信頼を確保しようとしていた少女が、自分の本音を大切にする自由を取り戻していった過程——腹痛という症状は、その抑圧された本音が身体に訴えかけていたメッセージだったのかもしれません。
過敏性腸症候群は「消化器の問題」ではなく、「特定の情報環境に紐付いた無意識的な情動反応が腸管誤作動として現れたもの」——この視点を明確に示してくれた症例として、非常に優れた報告です。鶴見先生の15回にわたる丁寧な記録と、患者さんとの真摯な向き合いに、敬意を表します。