医療の分野と脳・神経系への施術領域

医療は大きく分けて、「通常医療」と「補完・代替医療」に分類されます。これら2つを統合したものが統合医療です。学術分野で用いられる正式名称および元になっている英語表現は次のとおりです。

  • 通常医療(conventional medicine) 
  • 補完・代替医療(complementary and alternative medicine)
  • 統合医療(integrative medicine
  • 「通常医療」とは、おおむね西洋医学を臨床に応用した医療のことを指しています。
  • 「補完・代替医療」は、通常医療に代わり得る医療という意味で、そこには伝統医学から民間療法まで様々な療法が含まれています。
  • 「補完・代替医療」は、生命の自然治癒力を活性化させることを目的とし、それを得意としていますが、「通常医療」は、自然治癒力を活性化させることを最も苦手としています。

代替医療を療法別に分類すると以下のように3つに大分類することができます。

  • 身体刺激を介して身体機能や症状に働きかけようとする手技療法
  • ハーブ類やサプリメント類など栄養物質を介して身体機能や症状に働きかける栄養学的療法
  • 心理面から介入して身体機能や症状に働きかけようとする心理療法

 
生命の自然治癒力を活性化させる補完・代替医療を脳神経学的な視点で脳・神経系への施術領域を分類してみます。
脳は大きく分けて三層構造になっております。第一層目は、脊髄と脳幹で構成され、生命の脳、爬虫類の脳と呼ばれ、体温や呼吸、血圧調節、消化液分泌など、生命を維持するための機能を備えています。第二層目は、大脳辺縁系で、旧い脳、動物の脳と呼ばれ、本能行動や情動、記憶などにも関係しています。そして、第三層目は、新しい脳、人間の脳と呼ばれ、認知や理性的といった高度な判断をつかさどっています。
 

 
肉体に様々な「外的刺激」を加えて施術する手技医療や、栄養物質を介して働きかける栄養学的療法で活用される脳の領域の多くは、第一層目にあたる脊髄・脳幹です。その領域には一番底辺にあたる神経の「反射系」が存在し、この領域にはおよそ100種類程度の反射が備わっております。そして、その上位には、「複合反応系」があり、歩行や泳ぎのようにリズム発生器やかなり複雑な関数発生器を含む神経機構をもっております。その動作は機械的であり、中枢は脊髄と脳幹に局在しています。ちなみに、通常医療による投薬療法も、生化学反応を介して反射系や複合反応系に作用を及ぼします。
 

さらに手技療法で活用される上位の領域は、大脳基底核と小脳です。大脳基底核は大脳の深部にある大きな神経細胞の集塊で、大脳皮質の前面から入力を受ける一方、前頭葉に出力を介しており、大脳皮質の働きに密接に関与しています。大脳基底核は選択により脳幹の機能系の多様な刺激・反応関係を安定させる安定装置のような働きがあると考えられています。小脳は脳幹の機能系に適応性を付加し、反射は複合反応の刺激・反応の関係を外部環境条件などに合わせて変化させます。
 

 
心理療法で活用される領域は、主に第二層目と第三層目の大脳新皮質と大脳辺縁系です。大脳新皮質には様々な機能があり、その中の前頭連合野と呼ばれている部分は、脳のなかで最高レベルの精神機能を果たしている部分で、思考、学習、推論、意欲などと深い関係があります。同時に前頭連合野は、「喜・怒・哀・楽」といった感情とも関わりがあります。感情に比べて、より動物的な「快・不快」「好き・嫌い」といった情動は、大脳辺縁系や視床下部と関係します。
 
大脳辺縁系は複雑な構造の集合体で、その中の海馬は大脳新皮質に記憶が固定される過程に重要な役割を演じています。大脳辺縁系は刺激の生物学的価値を判断し、特に生得的行動に正負の強化を及ぼし、動物の行動に目的指向を与えます。
心には「知」「情」「意」という三つの成分があります。情報的な意味をつければ、「知」は認識や知識、「情」は価値判断、「意」は計画や制御に対応します。これらに共通するメカニズムとして記憶と学習があり、さらにこれら全体を統括するメカニズムとして意識があります。これらの複雑な心のメカニズムは大脳新皮質や大脳辺縁系で処理されています。
 

 
心身条件反射療法(PCRT)〔別名:ニューロパターンセラピー〕では、脳幹、脊髄の機能系の反射システムを利用して、様々な外界の刺激に対する機械的な反応パターンと、外界刺激を情報処理する大脳新皮質と大脳辺縁系の有機的システムの反応パターンを統合させた検査、ならびにエネルギー的施術を行います。身体面、心理面、社会面を統合させた施術法といえます。