両臀部と足の痺れを訴える男性ゴルファー
ーラポールの重要性ー

 
報告者:土子 勝成(つちこカイロプラクティックゴルファーズクリニック

2009.3.29
 

【患者】 52歳男性ゴルファー 会社員
【問診】 主訴:3ヶ月前から両臀部と両側ハムストリングへの痺れるような痛みを訴えて来院。
今年の1月2日にコースにて初打ちをした。その際、ボールをヒットした後、左臀部からハムストリングにかけて電気が走ったような痛みに襲われた。何とかプレーを継続し、帰りに整骨院にて電気治療を受けるが変化はなかった。
本人曰く、梨状筋症候群ではないかと思っているとのこと。理由はネット検索した中で一番自分の症状に近いからであった。
現状では、座っていれば痛みはなく、歩行や伸展によって痛みが発現。ゴルフのアドレスをすることによっても即座に両臀部とハムストリングへの痺れ・痛みが発現。排尿障害や夜間痛はなし。反射も正常であった。
初診時のVAS2~3/10 最も痛かったのは1月2日でVAS10/10
アクティベータで梨状筋も含め全身をアプローチしたが、ゴルフのアドレスをすると痛みはぶり返した。
本人曰く「もまないと良くならないのではないか」と訴えていた。
二回目、男性に精神的な関わりや緊張パターンや条件反射を説明するが、本人の理解は得られなかった。更に、梨状筋をもまないと良くならないのではないかとも訴える。男性自身の目が、マイナス面にしか向いていない状態であった。(話をしても、否定的な見解が目立った)

【検査】 右前腕の外旋筋群の筋力検査で痛みあり
右前腕の伸筋群の筋力検査で痛みあり
ゴルフの素振りでの違和感あり

【治療】 ベースラインを行い、梨状筋をもむこととした。
もみながら「最近良いことありますか?」「楽しいことやっていますか?」の問いに「良いことない」「楽しいことない」とマイナス的な返答が返ってきた。
「ゴルフをやりたいのですか?」と問うと、「やりたい」と返答した。そこで短下肢チェックなどして、もみながらでもニューロ・パターン・セラピー(心身条件反射療法)の検査のみを実施した。
「梨状筋をもんだら良くなりそうな気がしますか?」の問いに「良くなりそうです」との返答だったので、この日はもむだけで施術を終えた。

三回目、症状はぶり返していた。
そこでもんでも再発すると言うことは、神経伝達異常を治療したほうが良いのではないかと言うことを説明し、納得を得てアクティベータをベーシック・アドバンス・クリニカルと行った。更にニューロ・パターン・セラピー(心身条件反射療法)を少しずつ行っていった。
<PCRTの反応>
視野・身体感覚・未来・過去・人間関係・家族関係・自分自身・姿勢動作・スポーツ・ゴルフ
(切り替え)
・奥さんが理由も分からないことで怒る→+
・ゴルフスイングに問題がある、スイング改造→+にならない。
これは自分で腰を使って打つことに対してのこだわりがあった。

四回目、普通に歩けるが痛みはある。ゴルフのアドレス時に痛みあり。
アクティベータと梨状筋をもみ、ニューロ・パターン・セラピー(心身条件反射療法)を行う。
<PCRTの反応>
視野・未来・人間関係・自分自身
(切り替え)
・ゴルフスイングのイメージが分からなくなっている。
・ゴルフを行う意味も分からない。
・仕事でのストレス→+
・自分を責める→+
・もんで楽になる→+

五回目、
男性のゴルフスイングイメージはかなり負担のかかるもので、アドレスして腰から回転させていくという思いが強い。そこでK-VESTレッスンを受けることを薦めた。
治療としてはアクティベータ、ニューロ・パターン・セラピー(心身条件反射療法)を行う。もむのは止めた。
K-VESTレッスン:前の週に営業に行った明治神宮前ゴルフ練習場で行っているもので、手首・背中・腰にワイヤレスセンサーを付けて、3D映像にてのゴルフレッスン。

六回目、K-VESTレッスンを受けられて、ご自身のスイングイメージの間違いに気づかれた。
ニューロ・パターン・セラピー(心身条件反射療法)を行い、スイングイメージの切り替えを行った。
(切り替え)
・スイングと痛みの関係→+
・ゴルフをやりたくない制限(上手くいかないいらいら)→+
・ゴルフはお金がかかる、仕事を休んで行くゴルフ→+(俺が稼いでいる金だ)
・奥さんの冷ややかな顔→+(これからは一緒にやる)
・過去のトラウマ→+
アクティベータ後、アドレスをしてもらうと両臀部の痛みと両ハムストリングの痺れのような痛みはかなり解消されていた。

七回目、週末に河川敷ゴルフコースに行き、歩行でラウンドしたが両臀部も両ハムストリングも疲れた程度であった。
ニューロ・パターン・セラピー(心身条件反射療法)とアクティベータ治療を行う。(ニューロ・パターン・セラピーは前回の切り替え反応の再確認と修正を行う)
治療後、アドレス時の痛み消失。

【考察】 男性とはラポールを築くのに時間がかかった。男性は初診時、かなりのマイナス面に目が向いていた。原因はご自身の疾患も治療も、自分のイメージと違っていたためである。そのためニューロ・パターン・セラピー(心身条件反射療法)を行っていても、上手く切り替えることが難しかった。
しかし、片寄ったスイングイメージをレッスンなどを取り入れることで切り替えられたことは良かった。また、ラポールを築くために患者さんの望む「もむ(マッサージ)」ことを行ったことが結果として治療へとつながったと考えられる。「もむ(マッサージ)」ことは治癒には関係しなくとも、まさに「急がば回れ」で、柔軟な治療選択の大切さを学んだ症例であった。